- 表在癌
- 表在食道がんに対する
内視鏡的切除術 -
早期食道がんの中で、転移を生じる可能性が非常に低い病変に対しては内視鏡を用いて病変の切除を行います。これは口から挿入する内視鏡だけを使用した手術になるため、体の表面に傷をつけることなく、また退院後も広い範囲の切除でなければ元通りの食生活・日常生活を営むことができます。図1のように病変を上部消化管内視鏡検査で確認し(A)、小さな電気ナイフを用いて周囲を切開して病巣を剥離して切除します(B)。食道の壁は4mm程度ですが、2mm程度の上皮を病巣とともに剥離切除します。切除した病巣(C)は顕微鏡で病理診断を行い、転移を生じる可能性が低いと判断されれば治療は終了です。
当院における表在食道がんに対する内視鏡的切除術は年間約70症例と多くの症例の治療を行っております(図2)。
図1 表在食道がんに対する内視鏡的粘膜切除術
図2 当院における表在食道がんに対する内視鏡的切除症例数
- 食道がんに対する手術
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当院は全国有数の手術実績をもつ食道がん手術のハイボリュームセンターとして、西日本の最後の砦を自負し困難な患者さんの手術にも日々挑んでおります。食道がんに対する手術は、コロナ禍で手術制限を受けた2020年以外はほぼ毎年100例以上行っており、コロナがあけるのと同時に徐々に手術数も元の状態に戻りつつあります。食道がんの手術は消化器外科手術の中でも最も難易度の高い手術のひとつといわれておりますが、当科では日本食道学会の定める食道外科専門医が3名おり、高い安全性を維持しています。過去10年間の術後30日以内の死亡率は0.1%以下、在院死は1.0%以下と、全国平均と比較しても低い数字です。特色のひとつとして全国屈指のクオリティを誇る岡山大学病院周術期管理センターの多職種スタッフによる徹底したきめ細かい術前術中術後の患者さんへのアプローチが挙げられます。
食道がんに対する胸腔鏡手術を2011年度に導入し、これまでに800例以上の患者さんに行ってきました。2022年度は食道亜全摘を要する食道がん手術の全てに鏡視下手術(胸腔鏡手術・ロボット支援下手術・縦隔鏡手術)を行っており、開胸手術は0例でした。当院には日本内視鏡外科学会が定める技術認定医(食道領域で取得)が4名おり、食道がんに対する胸腔鏡手術を積極的に行っています。2018年度からロボット支援下手術の認定医が在籍する認定施設となり、ロボット支援下食道がん手術を導入して以後、手術手技の定型化・安定化を進めています。近年は年間40例以上の患者さんに施行しており、2023年6月現在で累積200例を超える実績となっています。
さらに食道再建術における2021年以降の縫合不全率は3%以下と全国平均と比較しても低い数字です。このように難易度の高い食道がん手術に対しても高い安全性を維持しています。
低肺機能など特にリスクが高く、従来なら手術が不可能であったような患者さんには胸壁破壊のない縦隔鏡手術を導入し安全に手術を行えています。
また、近年日本でも増加傾向の食道胃接合部がんに対する低侵襲手術として、胸腔鏡・腹腔鏡併用の「下部食道・胃噴門部切除、胸腔内観音開き法再建」を世界で初めて導入しました。癌の根治性はもちろん、術後逆流性食道炎を防止するQOLに配慮した術式として、全国から注目を浴びています。 - 高度進行癌に対する諦めない
集学的治療 - 高度局所進行食道がんは気管や大動脈といった隣接重要臓器へ浸潤することがあり、手術のみでの治療は困難です。また、遠隔転移を有するステージ4の高度進行がんも手術のみでの治療は極めて難しいとされています。
他の施設で「手術は不可能」と言われるような高度進行がんでも、抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせることで、手術ができることがあります(コンバージョン手術といいます)。
三剤併用の強力な化学療法や化学放射線療法に根治手術を組み合わせた集学的治療によって、根治が望めるようになってきています。また、たとえ根治が難しい状況であっても,患者さんの食事をしたいという気持ちに応える治療としてバイパス術やステント挿入など幅広い治療で患者さんの要望に沿った治療を行うようにしています。 -
- 放射線・化学療法
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放射線治療では、主にX線による治療が行われ、食道がんの標準治療の一つです。早期の食道がんから局所進行の状態に対して行われます。放射線治療単独として行ったり、手術のサポートとして手術前に行ったり、抗がん剤と組み合わせて根治的な治療として行ったりします。当院の各科・センターの専門家と協力して、適切な治療法を提案いたします。初回治療だけでなく、初回治療後の再発や転移に対しても放射線治療は行われます。食道がん術後の胸のリンパ節再発に対して、抗がん剤と組み合わせて放射線治療を行ったり、肺転移に対して定位放射線治療を行ったりします。また、骨転移に対する放射線治療は、痛みの緩和にも大きな威力を発揮します。
転移であっても少数の場合(オリゴメタスタシス)や、脊椎転移に対しては2020年4月に定位放射線治療が可能(保険適応といいます)となり、開始しております。